簡単にまとめると
豊かな漁場を有し、全国屈指の漁獲量を誇る千葉県銚子漁港。様々な魚が水揚げされる中でも、千葉ブランド水産物生鮮第一号に認定されている魚があります。それが、「銚子つりきんめ」。驚くほどの脂乗りで、実もふわふわとして美味しいと評判です。このブランド魚の魅力について、銚子市漁業協同組合・外川支所青年部副部長の鴨作泰幸さん、会計の加瀬裕耶さん、総合企画室の間淵塁さんにお話をお伺いしました。
銚子の海は黒潮と親潮、利根川から流れてくる淡水が交錯する好条件の漁場で、バラエティに富んだ魚が集まり、年間20~30万トンもの魚が水揚げされています。その中でも水深200m以上の深海に生息するキンメダイにとって最適な環境となっているのが、銚子沖です。
「銚子の漁場はキンメダイの最北限と言われています。海にはプランクトンが多く発生しているので、栄養がたっぷりの場所なんです」(鴨作泰幸)
「銚子つりきんめ」は築地(現在は豊洲)市場でも評判のブランドとして確立しています。
「千葉県のブランドフィッシュの第一号として認定されました。『銚子つりきんめ』という商品名自体が商標登録されているんですよ」(間淵塁)
現在、約80名の漁師が「銚子つりきんめ」を専門として活動しており、37隻の船が海へ出ています。深夜0時頃に出発し、2~3時間ゆっくりと時間をかけて漁場へと向かうそうです。漁は一匹、一匹を丁寧に扱うために、すべて手釣りで行われています。
「網だと魚体が傷つきやすいので、立て縄と呼ばれる一本釣り漁法を採用しています。1本の縄に60本の釣針が並んだものを使用して釣り上げます。鮮度が重要なので水揚げしたら手際良く、すぐに氷締めにしているんです」(鴨作泰幸)
漁には乱獲を防ぐために厳格なルールが設けられており、メインで使う漁場を定期的に変えて休ませるなど、常にフレッシュな状態の漁場を保つために資源管理にも力を入れています。
「漁に使用する道具も乗組員の数+1本と決まっていて、漁ができる時間も日の出から3時間以内。短時間であればあるほど新鮮ですからね」(鴨作泰幸)
ルールを守りつつ、スピード感のある漁。それを可能にしているのが、キンメダイ漁師たちの団結力の強さであり、それこそが「銚子つりきんめ」の価値を高めてきたのだと教えてくれました。
「キンメダイは昔、大衆魚だったそうです。しかしその価値を高めて将来へと繋げるために、先人たちがルールを作り、団結して価値を高めてきた歴史があるんです。鴨作さんや加瀬さんのような若手のキンメダイ漁師が、今後の漁業への危機感をしっかりと持ち、どうすれば継続できるのかを常に考えているのも好感を持っています」(間淵塁)
水揚げ後はすぐに卸売市場へ。市場は漁師や仲買人など関係者でごった返し、熱気が湯気として立ち昇るほど活気にあふれています。ヒラメやタイなど様々な魚が並ぶ中でも、真っ赤で大きな目をむき出している「銚子つりきんめ」は特別な存在感を放っています。
鮮度を保つため、なるべく手で触れないように導入された機械によってより分けられ、仲買人によって競り落とされます。過去には1尾6万円という高値で競り落とされたこともあるようで、ブランド魚としての知名度も抜群です。
抜群の鮮度で届く「銚子つりきんめ」。気になるその味は、もちろん極上。最高の脂の乗りでまろやかな甘みがあり、身はふわふわと舌の上で踊ります。生臭さもあまりなく、小骨も少なくて食べやすいのも特徴です。煮つけ、塩焼き、刺身や寿司など、様々な料理の主役となってくれます。さらには地元ならではの美味しい食べ方も教えてもらいました。
「煮炙り丼もおすすめです。元々、漁師たちは煮つけを作って、残ったものを次の日に焼いて食べていたんですね。そこから着想を得てできた丼もので、「Fish-1(フィッシュワン)グランプリ」というイベントで優勝したこともあるんですよ」(加瀬裕耶)
「和食はもちろん、カルパッチョなど洋食でも美味しい」(鴨作泰幸)という「銚子つりきんめ」。
年間を通してずっと”旬”と言える脂の乗りなので、その美味しさを是非とも堪能していただきたい。